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 これまで、世界で最も空力に優れた車はレーシングカーだった。滑らかな流線型の車体は、空気抵抗を減らし最高速度を増加させるためのものだ。風洞実験を繰り返し、エンジニアは可能な限り車体の上を風が滑るように設計する。空気抵抗は加速を妨げるばかりではなく、燃費にも悪影響を与える。

 2016年モデルとして販売される車に対し、アメリカ政府は、各自動車メーカーが販売する車種の平均燃費として34.1mpg(14.5km/L)を達成するように定めている。自動車メーカーは燃費を向上させるための手段として、空気抵抗の削減に目を向けた。その結果、スポーツカーをも上回る空力性能を持つ乗用車が誕生している。

 空力性能を表す最も一般的な指標は、空気抵抗係数(Cd値)だ。Cd値は、車体に風を吹きつける風洞試験によって測定される。Cd値が低ければ低いほど空力に優れる。市販車の平均Cd値は0.30から0.35の間だ。そして、乗用車よりも遥かに速いレーシングカーのCd値は、それよりも悪い。

 レーシングカーでは高速走行時の揚力を抑えるために、スポイラーなどのエアロパーツを装備する。空気抵抗を発生させて、車体を地面に押さえつける力「ダウンフォース」を得るためだ。燃費に優れるセダンがレーシングカーよりも空気抵抗値で優るのは、これが理由だ。

 車体底面に取りつけるアンダーカバー、小型化したフロントグリル開口部、可動式のフラップといった装備が、燃費を改善するために乗用車にも採用され始めている。エンジンの小排気量化、トランスミッションの多段化も燃費向上には不可欠だ。このランキングでは、時速360kmに達するスポーツカーから環境に優しいハイブリッドカーまで、空気抵抗係数トップ10の市販車を選出した。

10位 BMW i8(Cd値:0.26)


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 BMW「i8」は、最先端の技術を惜しみなく投入して開発された車だ。カーボンファイバー製の緻密な車体に搭載するのは、1.5リッターツインターボエンジンと電気モーターを組み合わせるパワートレインだ。総合出力は362馬力に達する。軽量な車体は、静止状態から60mph(97km/h)に加速するまで3.8秒しかかからない。そして、この種のハイパフォーマンスカーとしては例外的な12km/Lという優れた燃費には、0.26を計測したCd値の低さも寄与しているだろう。

9位 ジャガー XE(Cd値:0.26)


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 ジャガーはXEを「これまでジャガーが生み出した最も効率的で先進的かつ、洗練されたスポーツサルーン」と自慢する。市場ではBMW「3シリーズ」、メルセデス・ベンツ「Cクラス」の対抗車だ。0.26というCd値は、空気抵抗削減に力を注ぐジャガー開発チームの確かな成果だ。

8位 マツダ Mazda3(Cd値:0.26)


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 優れた操縦性、美しいデザイン、そしてフェラーリよりも優れた空力。Mazda3(アクセラ)は、小型セダン市場で大きな存在感を持つ1台だ。滑らかな車体は、小型セダン車として最高となるCd値0.26を計測する。実燃費14km/Lに達する高効率エンジンも、この車の魅力だ。

7位 メルセデス・ベンツ Bクラス(Cd値:0.26)


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 メルセデス・ベンツは開発の際、入念な風洞実験を繰り返すことで有名だが、サブコンパクトカー「Bクラス」もその例外ではない。BクラスのEV仕様車は、日産「リーフ」、BMW「i3」への強力な対抗車だ。Cd値は0.26で、これはi3の0.29、リーフの0.28という数字を下回る。一度の充電で140kmを走る航続可能距離には、Cd値の優秀さも助けになっているはずだ。

6位 日産 GT-R(Cd値:0.26)


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 優れたCd値はすなわち、優れた加速力だ。553馬力のツインターボエンジンを搭載するGT-Rは、世界最高峰のスポーツカーの一つだ。0-60mph(97km/h)加速は3秒を下回り、最高速度は315km/hに到達する。

5位 トヨタ プリウス(Cd値:0.25)


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 プリウスほど低燃費という言葉が似合う車は他にない。プリウスはハイブリッドの可能性を証明し、どんな車よりも燃費を追求しなければならない義務を持つ。空力を第一に設計された車体はCd値0.25を記録し、実燃費21km/Lを達成している。

4位 メルセデス・ベンツ Sクラス(Cd値:0.24)


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 メルセデスの空気抵抗低減の取り組みは、燃費を改善することだけが目的ではない。フラッグシップモデル「Sクラス」に徹底した風洞実験を繰り返す理由は、高級車に必要不可欠な静粛性を追求するためだ。Sクラスをベースとする「マイバッハ S600」が、世界で最も高い静粛性を達成したのは、0.24という傑出したCd値の賜物だ。

3位 メルセデス・ベンツ Cクラス(Cd値:0.24)


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 メルセデスが新型Cクラスの空気抵抗を旧型よりさらに削減したわけは、Sクラスの場合とは違う。性能を極限まで高めるためだ。スポーツセダンとしてはBMW「3シリーズ」の評判が高いが、新しいCクラスは3シリーズに匹敵するだけの性能を備えている。Cd値0.24を計測する優れた空力性能も、その一つだ。

2位 テスラ モデルS(Cd値:0.24)


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 豪華で美しいデザイン、優れた安全性、電気モーターの強力なパワー。テスラ「モデルS」は、電気自動車としては最も有名な存在となった。また、Car and Driver紙が2014年に行った風洞実験では、市販車として最小のCd値を記録するなど、空力性能にも優れているようだ。

1位 フォルクスワーゲン XL1(Cd値:0.189)


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 もしスーパーカーの条件が最高速度の速さでなければ、XL1はまさにスーパーカーと呼ぶに相応しい傑出した車だ。Cd値は0.189と、このランキングでも抜きんでた低さを誇る。133km/Lという驚異的な燃費を達成するために、XL1は空気抵抗の元となるものを一切排除した。フロントグリルとサイドミラーは外され、リアタイヤはカバーに覆われている。カーボンファイバー製の車体と小型2気筒エンジンの採用によって、車重は1000kgを下回った。値段は16万7736ドル(約1885万円)ながら、フォルクスワーゲンは25台のXL1をヨーロッパで販売している。

 XL1の外観は奇妙としか言いようのないものだ。しかし、未来の車はみなこのような形になっているかもしれない。アメリカ政府は2025年までに、各自動車メーカーが販売する車種の平均燃費として54.5mpg(23.1km/L)の目標を掲げている。これを達成するために、車の空力性能はますます重要視される要素となるだろう。空気抵抗軽減による性能と燃費の向上は、車の未来へと繋がっている。


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10 of the Sleekest Cars on the Road