TRN注:この記事は長いです




 今年のスーパーボウルでは、プリウスのテレビCMが放映された。銀行強盗がプリウスを操り、警察とカーチェイスを繰り広げるというあらすじだが、動画で強調されていたのはプリウスの「機敏さ」だった。プリウスに代表される環境対応車は今、1つの転換期を迎えている。

 これまで、自動車メーカーはハイブリッド車や電気自動車の利点として、特に「低燃費」を謳っていた。しかし、ガソリン価格の急激な下落によって、燃料を節約できるという利点は薄れ、環境対応車は魅力を失っていった。そこで、自動車メーカーは燃費性能に加え、別の要素を前面に出すことで、魅力を訴えようとしている。

 「奇妙で風変わりな車という評価は既に過去のものだ」と、ヒュンダイ・アメリカの製品担当副社長Mike O'Brienは語る。「電気モーターとバッテリーは、燃費だけではなく、車をもっと良くするための手段でもある」

 現在、ハイブリッド車と電気自動車は、主に環境意識の高い層に向けて販売されている。ハイブリッド車の場合、同じ車種でもガソリン車に比べ数千ドル(数10万円)ほど価格は高い。差額は燃料費の節約によって最終的に回収されるが、パワーや運動性に劣るというハイブリッド車の欠点は不満の種だ。電気自動車では、航続距離の制限という不安が常に付きまとう。

 そうした短所は徐々に解消されつつある。シボレー、テスラの両者は、3万ドル(約336万円)ほどの安価な電気自動車を発売する予定だ(補助金込み)。バッテリーの改良技術により、航続距離は年々増加しており、また、専門家はガソリン価格が将来的に上昇するだろうと予見している。近年登場した自動運転技術は、ガソリン車よりも電動車との相性が良い。

 今週開催されるニューヨークモーターショーでは、トヨタのプリウスに加え、ヒュンダイが新しい環境対応車「アイオニック」を出展する予定だ。

 アイオニックは3種類の電動パワートレインを持ち、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車として発売される。トヨタが披露するのは、プリウスのプラグインハイブリッドモデルだ。

 初代プリウスの発売によって、2000年代当時、アメリカでは環境問題への意識が大いに高まった。トヨタはプリウスのデザインを一風変わったものにしたが、これは意図的なものであり、オーナーがこの車に乗ることによって、環境問題への意思を明確に表明できるようにとの狙いがあった。

 その後、ハイブリッド車の発売は他社も続いたが、市場で主流の存在になることはなかった。原因の1つには、旧来のガソリン車が、技術改良によって燃費を向上させていったこともある。

 自動車調査会社のケリー・ブルー・ブックによれば、ハイブリッド車と電気自動車が最も売れたのは2013年で、当時のガソリン価格は1ガロンあたり3.5ドル(1リットルあたり約103円)だった。アメリカでの販売台数は34万1000台で、これは全新車販売台数の2.2%にすぎない。

 アメリカ政府は2025年までに、各自動車メーカーが販売する車種の平均燃費として54.5mpg(23.1km/L)の目標を掲げている。自動車メーカーはこれを達成するために、環境対応車開発への巨額の投資を余儀なくされている。

 現在、ガソリン価格は1ガロンあたり2ドル(1リットルあたり約59円)を下回り、ハイブリッド車と電気自動車は不振に喘いでいる。2015年のアメリカでの販売台数は27万4000台だった。

 環境対応車にとっては逆風だらけの現状だが、自動車メーカーは新たな活路を見出そうとしている。デザイン、加速力、操縦性や信頼性といった、ハイブリッド車と電気自動車の強みとなりえる点を、積極的に訴えようという動きだ。

 「デザインも走行性能も良くなった。ハイブリッドが持つ利点に、先進的な装備・安全性が加わり、ドライバーは運転をもっと楽しめるようになった」と、トヨタ・アメリカのゼネラルマネージャーBill Fayは、新型プリウスの完成度に自信を見せる。

 アメリカの多くの州では、自動車にはガソリンよりも電気を動力として使った方が安くなると、ケリー・ブルー・ブックのシニアアナリストKarl Brauerは分析する。バッテリー小型化技術の進歩は、製造コストの削減をもたらし、自動車に搭載できるバッテリーの量も増加した。

 電気モーターの加速はガソリンエンジンよりも強力だ。静粛性も高く、可動部が少ないため、部品の信頼性も高い。

 トヨタ「カムリ」のガソリン仕様車とハイブリッド仕様車の価格差は3720ドル(約41万6000円)だ。ガソリン代を1ガロンあたり2ドル(1リットルあたり約59円)で計算すれば、平均的な走行距離のオーナーが差額を回収するには、10年以上もかかってしまう。

 しかし、これは公平な比較ではないと、自動車調査会社IHSオートモーティブのシニアアナリストStephanie Brinleyは指摘する。上級グレードとなるハイブリッド仕様車は、ベースグレードに比べ、装備や機能も追加されている場合が多いからだ。

 シボレー「ボルト」、テスラ「モデル3」は、電気自動車としては安価ながら、航続距離は200マイル(約320km)に達するとみられる。ボルトは年内、モデル3は2017年内に発売予定だ。現在のガソリン価格水準は懸念材料だが、大衆向けの電気自動車として広く注目を集めるだろうと、Brauerは述べる。

 チャージステーションがアメリカ全土にくまなく普及しているとは言えず、それが電気自動車の普及を妨げる原因だったが、航続距離が伸びれば、外出先で充電する必要もなくなるはずだ。

 無人自動運転機能と電気自動車を組み合わせれば、人の手を借りずに電気を充電することも可能になると予想される。一方、ガソリン車が無人で燃料を補給することは難しい。

 SUVとトラックに新しいシステムが導入され、今後12年以内には、アメリカで販売される車の半数以上が、ハイブリッド車と電気自動車になるとBrauerは予測する。一方、ヒュンダイのO'Brienは、ガソリン車の電動化への移行時期はもっと早く訪れるだろうと述べた。

 また、予想されるガソリン価格の上昇も、この動きを加速させるはずだ。国際エネルギー機関(IEA)は、2020年までに、原油価格が現在の2倍以上になるとの見方を示している。国際石油資本が設備投資の削減に踏み切ったことで、現在の供給過剰状態が緩和されるためだ。

 インディアナ州ローウェルに住む水素エンジニア・Mick Roberts(46歳)は、昨年10月に、シボレー・ボルトの2015年モデルを購入した。ローウェルのガソリン価格は1ガロンあたり2.2ドル(1リットルあたり約65円)と、安価にも関わらずだ。Robertsは、ボルトの滑らかな乗り心地、静かなモーター、素早い加速感を気に入っているという。「一度味わったら、ガソリン車に戻るのは難しい」と、語る。

 ハイブリッド車と電気自動車が広く受け入れられるためには、もっと多くの人々に魅力を説明する必要があると、自動車メーカーは認識している。

 トヨタのFayによれば、プリウスのカーチェイス動画にはまだ続きがあるという。新しいプラグインハイブリッド・プリウスも登場するそうだ。「目新しい製品を真っ先に試すような層のユーザーなら、旧来のガソリン車との違いを理解してもらえるはずだ。だが、市場の大多数を占める一般層の人々に購入してもらうためには、ハイブリッド技術の魅力をきちんと説明しなければならない」と、Fayは語った。


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Apart from saving fuel, electric and hybrid vehicles are faster, quieter also | ET Auto