中国の自動車市場で圧倒的なシェアを誇るフォルクスワーゲンだが、この先もそうだとは限らない。世界的なSUV人気の高まりは中国にも押し寄せてきており、現地での展開車種がセダンに大きく偏っているフォルクスワーゲンは、消費嗜好の変化に対応できていない。展開車種の内訳は、セダンが9台、ハッチバックが2台、ワゴンが2台、ミニバンが1台、SUVが1台だ。この15車種のうち、これから紹介する10台は、中国だけで販売される特別な車だ。

一汽大衆 ジェッタ


1

・価格=8520ドル(約91万2000円)
・エンジン=1.4L、1.4Lターボ、1.6L

 一汽大衆(一汽フォルクスワーゲン)は、第一汽車とフォルクスワーゲンの合弁会社だ。ジェッタは小型のセダン車で、後述するサンタナとほぼ同仕様の車である。中国におけるジェッタの歴史は長い。初代一汽大衆ジェッタは、1984年発売の海外版第2世代ジェッタを基に開発された。1991年から2012年まで中国で販売され、200万台以上を売り上げている。現行型は2013年に販売を開始した第2世代だ。

 フォルクスワーゲンが中国で展開するセダンは、そのどれもが同じような見た目や価格であり、消費者を大いに混乱させている。その原因は、フォルクスワーゲン自体気が触れているか、あるいは、中国の合弁会社制度に起因している。

 中国では輸入車に高額な関税が課せられ、その上、自動車を現地生産する場合は「中国のメーカーと合弁会社を設立しなければならない」という決まりがある。最大2社までの現地メーカーと提携することができ、多くの海外メーカーは2つの合弁会社を保有している。理由は、1社の現地メーカーに依存したくないこと、そしてもっと単純には、生産・販売能力をさらに拡大するためだ。しかし、2つの合弁会社を持つということには欠点もある。

 現地メーカー同士は販売を競い合うライバルであり、海外メーカーが両社で製造する車を自由に割り振ることは難しい。どちらの現地メーカーも、売れる車を作りたいと考えるからだ。結果、海外メーカーから提供された同じ車を、別の仕様・車名を与えてそれぞれの合弁会社が製造、販売するという事態が起こってしまう。

上海大衆 サンタナ


2

・価格=8495ドル(約90万9000円)
・エンジン=1.4L、1.4Lターボ、1.6L

 上海大衆(上海フォルクスワーゲン)は、上海汽車とフォルクスワーゲンの合弁会社だ。サンタナは、初代機が1983年から2013年まで生産され、2012年に現行型を発売している。ミニバンなど、いくつかの派生車種も作られた。

 このサンタナと一汽大衆ジェッタは名前と販売元が異なるだけで、中身はほぼ同じだ。同様の例では、上海大衆のパサートはマゴタン、ラヴィーダはボーラの名で一汽大衆が販売している。

 一汽大衆と上海大衆はそれぞれが独自の販売店や流通網を持つため、無駄が多いように思えるが、販売面では両社ともに好調のようだ。ただし、中国現地で近年急激に高まったSUV・クロスオーバー車の需要に対応できず、目下の成長率は鈍化している。フォルクスワーゲンはまず、乱雑するセダン車の整理・統廃合に着手すべきだろう。

上海大衆 グランサンタナ


3

・価格=1万0600ドルドル(約113万5000円)
・エンジン=1.4L、1.4Lターボ、1.6L

 セダン車・サンタナにハッチバックとワゴンの要素を取り入れたのが、グランサンタナだ。上海大衆は、荷室容量の広さを特に強調しているが、実際はサンタナをリアハッチ仕様にした程度の差しかない。この車のクロスオーバー派生車種・クロスサンタナも年内に発売予定だ。

上海大衆 ラヴィーダ


4

・価格=1万3200ドル(約141万3000円)
・エンジン=1.2L TSI、1.4L TSI、1.4Lターボ、1.6L

 ラヴィーダは、中国フォルクスワーゲン車の中で最も人気のある車種だ。デザインに優れ小型で取り回しのよい車体、頑丈なエンジン、そして安価な価格設定が人気の理由だ。中国の至る所で見かける車だが、上海大衆は毎年のように年次改良の新型を発売し、特別仕様車も投入するなど、ラヴィーダの人気維持に余念がない。

上海大衆 グランラヴィーダ


5

・価格=1万2900ドル(約138万1000円)
・エンジン=1.4Lターボ、1.6L

 グランサンタナとよく似た車だが、こちらの方がグランサンタナよりも広い荷室空間を備え、ワゴンの特徴が強い。若いファミリー層に人気があり、特に小さな都市部でよく売れている。

上海大衆 クロスラヴィーダ


6

・価格=1万8370ドル(約196万6000円)
・エンジン=1.4Lターボ、1.6L

 グランラヴィーダのクロスオーバー派生車種が、クロスラヴィーダだ。中国では、セダンやワゴンにSUV要素を追加した「クロス」車が流行しており、元のモデルよりも派生車種の方が人気を集める、という例も少なくない。ただし、そういった派生車種は、純粋なクロスオーバー車の性能を備えているわけではない。ベース車両に多少のオフロード性能や、SUV風のデザインを与えているだけだ。車高はやや高めに設定され、黒色のプラスチック加飾パーツや、ルーフレールが追加されることが多い。

一汽大衆 ボーラ


7

・価格=1万5560ドル(約166万6000円)
・エンジン=1.4Lターボ、1.6L

 初代ボーラは2002年から2010年まで発売され、その後、現行型へ切り替わった。高性能仕様車の「ボーラR」はマニアの間で人気の存在だという。現行型はラヴィーダとプラットフォームを共有し、ラヴィーダ同様毎年のように新型を発売している。一汽大衆はボーラのクロスオーバー派生車種投入を計画しており、フォルクスワーゲンのラインナップは一層混迷を深めることになるだろう。

一汽大衆 サギター


8

・価格=1万5600ドル(約167万円)
・エンジン=1.4Lターボ、1.6L、1.8Lターボ

 サギターは、中国国外で販売された5世代目ジェッタ(2005年~2011年)を基に開発された。車格はボーラとパサートの中間に位置する。かつて、エンジンを203馬力に強化した高性能仕様車「サギターGLI」を発売したこともあったが、販売は振るわず、1年限りで廃止となった。人々がこの価格帯の車に求めるのは信頼性や利便性であり、スポーツ性能ではなかったということだろう。

上海大衆 ラマンド


9

・価格=1万6550ドル(約177万2000円)
・エンジン=1.4Lターボ、1.4L TSI、1.8L TSI

 ラマンドは、中国国外で販売される4ドアクーペ・CCに似たデザインを与えられ、個性的な車体色も用意されるなど、ファッション性を強調したセダンだ。サギターと共通のプラットフォームを採用している。ラマンドの内外装は質の高いものを使用し、価格もやや高めに設定されている。

上海大衆 フィデオン


10

・価格=4万8000ドル(約513万8000円)
・エンジン=2.0L TSI、3.0L TSI V6

 フィデオンは今年のジュネーブモーターショーで発表された、中国市場専用の最上級セダンだ。発売元は異なるが、一汽大衆のアウディ・A6Lと共通のプラットフォームを採用し、発売は2016年9月を予定している。


 もし中国でセダンを購入予定なら、フォルクスワーゲン販売店を尋ねるのが賢明だ。安価な大衆車から富裕層向けの高級車まで、幅広く展開している。しかし、SUVはどうだろうか? 中国向けにはティグアンの1車種だけが販売されており、価格は3万ドル(約321万1000円)と、高額な部類に入る。中国で売れ筋のSUVの価格帯は、1万5000ドル(約160万6000円)から2万3000ドル(約246万2000円)の間であり、ティグアンが販売好調とは言いがたい。

 仮に、価格がラヴィーダ程度の安価なSUVが発売されれば、大いに人気を博す存在となるだろうが、フォルクスワーゲンは低価格帯のSUVに興味が無いようだ。同社が開発中のSUVコンセプト車「クロスブルー」はティグアン以上の価格が予想され、今年の北京モーターショーで公開された「Tプライム コンセプト GTE」に至っては、ティグアンの上位車種・トゥアレグ(4万2705ドル、約457万1000円)の価格を超える見込みだという。フォルクスワーゲンの戦略には疑問符を付けたいところだ。


Source & All photos by
10 Volkswagens You'll Only See In China - Forbes


中国フォルクスワーゲンは複雑怪奇なり
写真見ても本当に似たようなのばっかだ……

ジェッタ紛らわしいだろ問題
まず、フォルクスワーゲンは中国国外でジェッタという車を販売しています(これを海外ジェッタとします)。現在6代目です。

一方、中国では、2代目の海外ジェッタを基に開発した一汽大衆ジェッタを長らく販売していました。フォルクスワーゲンは最新の海外ジェッタを中国へ導入するにあたり、一汽大衆ジェッタを置き換えるのではなく、別の車名を与えて販売することにしました。これがサギターです。

その後、一汽大衆ジェッタは2013年にモデルチェンジを行い、サギターとも海外ジェッタとも違う、一汽大衆の独自開発車となりました。